「もっと知りたい」から、地域に飛び込んでみる
野下 昂平さんの最初の一歩
こんにちは!ココラボです。
今回は『みんなの一歩』の16人目のご紹介です!
みんなの一歩とは?
鹿児島県内では、実に多様な人たちが、さまざまな想いや背景を抱えながら、地域での活動に取り組んでいます。
その一歩一歩には、それぞれにしかない物語があります。
「みんなの一歩」では、
鹿児島県内で地域や社会のために活動している方々にインタビューを行い、「どんな想いで活動しているのか」「その活動を始める最初の一歩は何だったのか」を丁寧に紐解いていきます。
「誰かの最初の一歩を、そっと後押しできたら」
そんな願いを込めて、このシリーズをスタートしました。
地域で何かを始めたいと考えているあなたにとって、きっとヒントになる「誰かの一歩」が見つかるはずです。
きっとあなたの背中を押してくれる、一歩目がここにあります。
今回ご紹介する16人目の方は、鹿児島県職員として働きながら、現場に足を運び、人と出会い、地域と関わり続けている野下 昂平(のした こうへい)さん。
前編では、野下さんが「もっと知りたい」「関わってみたい」という気持ちから、
どうやって地域との接点をつくっていったのか、その最初の一歩を辿ります。
今回届けたいこと
野下さんは最初から地域で何かを実践していたわけでもなく、
「困っている人に、もっとアプローチできる形で関わりたい」
「もっと知りたい」
「関わってみたい」
という気持ちをきっかけに、少しずつ行動を重ねていった人。
だからこそ今回は、
地域に関わってみたいと思い始めた人が、どうやって最初の一歩を踏み出していけるのか。
そのことを一緒に考えられるような回にしたいと思っています。
野下 昂平さん プロフィール
出身:鹿児島市(1991年生まれ)
経歴:
東京にある大学を卒業後、建材を扱う専門商社に新卒入社(営業職)。
福岡県の営業所に配属され約1年間勤務。2年目のタイミングで離職。
鹿児島へ戻り、1年間、公務員学校に通い、2018年11月に鹿児島県庁に入庁。
現在:
公務員として働く傍ら、休日などを利用し、県内各地で取り組まれている様々な地域づくりの現場に参加している。県庁コミュニティ大工倶楽部(CDC)メンバー。
原点

野下さんのお話を伺っていて印象的だったのは、
最初から「地域で何かをしたい」とはっきり決めていたわけではない、ということでした。
その出発点の一つに、「困っている人に、もっとアプローチできる形で関わりたい」という思いだったように思いがありました。
その背景にあったのが、社会人1年目に経験した熊本地震でした。
建材の専門商社で働くなかで、復旧に向けた需要の高まりを現場で感じる一方、
「本当に困っている人に、もっとアプローチできる仕事はないだろうか」と考えるようになったといいます。
『そう考えたとき、災害復興ボランティアの中で見た自治体の動き方が、自分の中でしっくりきたんです。』
「自分が充実感を持てるのは、もっと公共性の高い仕事かもしれない」
この思いをきっかけに、野下さんは公務員を目指しました。
現場に行く理由
社会人2年目のタイミングで公務員を目指し、退職。
その後の1年間、野下さんは公務員学校に通い、ひたすら勉強したそうです。
そして無事に鹿児島県庁に入庁後、最初の配属は地域政策課。
担当は地域おこし協力隊でした。
ここで野下さんは、各地で活動する協力隊の姿を間近に見ることになります。
行政に身を置きながら、地域のなかで様々な分野で活動している。
その姿が、野下さんにはとにかく興味深かったそうです。
一方で、野下さんの業務は、県域全体を対象とした制度設計や調整作業が中心でした。
広い視点で全体を見る仕事だからこそ、現場で一人ひとりが何を感じ、何に悩み、どんな関係の中で動いているのかまでは、どうしても見えにくい部分があると感じたそうです。
そうした、「全体を見る仕事」と「現場で一人ひとりの声や状況に向き合うこと」との距離を目の前で感じたことで、野下さんは、現場に足を運ぶことの意味をより強く意識するようになりました。
『資料や文字だけでは、その人の活動の本質は分からないと思うんです。現場に行って、話を聞いて、できるなら一緒に体験してみないと見えてこないと思っています。』
この感覚が、野下さんの地域との関わり方の土台になっていきました。

野下さんの最初の一歩
野下さんにとっての最初の一歩は、
「県庁コミュニティ大工倶楽部(CDC)」に参加したこと。
(県庁CDCは、鹿児島県庁の職員を中心に、空き家再生と地域活性化を目指し、DIYを通して物件のリノベーションやまちづくりを行う任意団体です。専門家が採算面から手を出しづらい空き家の活用を、地域住民や活動に興味を持つ人の参加も巻き込みながら、「地域資源の利活用」と「人とのつながり」を楽しみながら実現しています 。)
野下さんにとって県庁CDCは、ただ活動を見る場ではなく、
自分もその場に入り、手を動かし、人と関わりながら参加できる場だったことが大きかったそうです。
空き家の現場で一緒に作業をする。
そこに集まった人たちと話す。
同じ時間を過ごしながら、その場の空気を感じる。
『大工仕事そのものが目的というより、現場で人と会って、一緒に何かをやる、その時間に惹かれていました。』
最初から何か特別な役割があるわけではなくても、その場に行くことはできる。
少し関わってみることはできる。
野下さんにとって県庁CDCは、そう思わせてくれる場所でもあったのだと思います。

野下さんは、県庁CDCなどの現場に関わる中で、「もっと地域のことを知りたい」という思いを強めていきます。
そして、その次の一歩として、鹿児島県が主催する「人材育成講座」への参加します。
ただその一方で、自分自身はまだ参加する側であり、何かを実践している人たちと比べると、「自分がこうした場に入っていいのだろうか」という迷いもあったそうです。
『何か活動をしているわけではない自分が、行っていいのかなという気持ちはありました。』
それでも参加してみると、今まで出会えなかった人たちとつながり、地域との関わり方には自分が思っていた以上に多様な形があることを知ったといいます。
また、地域に関わる様々な立場の人たちの話を聞く中で、「自分はまだ地域のことを全然知らなかった」と感じると同時に、「では自分は何をしたいのだろう」と考えるようになっていきました。
それまでは、現場に行って手伝うこと、混ざってみることが野下さんにとっての一歩でした。
けれど講座を通して、その先にある自分はどんな関わり方をしたいのかを考えて、
「いつかは参加する側だけではなく、企画する側にも回りたい」
という思いも、少しずつ芽生えていったそうです。
最初の一歩は、大きな挑戦ではなくてもいい。
まずは行ってみること。
顔を出してみること。
少し混ざってみること。
そして、その小さな一歩を重ねる中で、次の問いや次の関わり方が見えてくる。
野下さんの話からは、そんなプロセスが伝わってきました。

野下さんの話から伝わってきたのは、小さな行動の積み重ねが、地域との関わりを少しずつ形にしていくということでした。
そして、一歩踏み出したからこそ、野下さんの中には新たな問いも生まれていきます。
現場に関わる中で何が見えてきたのか。
その経験を通して、どんなことを大切にするようになったのか。
そしてこれから、地域とどのように関わっていきたいのか。
後編では、そうした野下さんの変化や気づきを、さらに掘り下げていきます。
(執筆者: 一般社団法人テンラボ 古賀)
