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みんなの一歩 ろくにんめ 〜和田新さん〜

こんにちは!鹿児島県共生・協働センター、通称ココラボの情報発信を担当しておりますパッションです!

 

ココラボでは『みんなの一歩』と題して、鹿児島県内で活動をされている方に活動の経緯や活動に対する想いなどを記事にまとめて、ココラボに入って左手すぐの壁際に展示しています。

 

ろくにんめとなる今回は鹿児島県霧島市牧園町で、農業をされながら、移住体験住宅を運営されている方にインタビューしました。どんな想いで活動されているのか、そもそも最初の小さな一歩は何だったのか、どうやって一歩を踏み出していったのかなど、たくさんの話を聞くことができました。

 

皆さんに、鹿児島でとても素敵な取り組みをされている方を知ってもらうとともに、皆さんの活動を始める小さな後押しになると嬉しいです。

みんなの一歩とは?

鹿児島県内には、多種多様な方々が様々な活動をされています。そしてその活動に至るまでの過程も様々です。

そこで『みんなの一歩』では、鹿児島県内で活動をされている方がどんな想いで活動をしていて、その活動を始めるそもそもの最初の一歩は何だったのかをインタビューしていきます。

 

みんなの一歩が、皆さんの活動を始める一歩の小さな後押しになるように、そんな想いで始めました。


みんなの一歩 ろくにんめ

和田 新(しん)さん 農土家園代表

ープロフィールー

鹿児島県霧島市生まれ。農土家園(のどかえん)代表。東京農業大学を卒業後、ボルダリングジムの店長を退職して、2018年に霧島市へUターン。2019年、新規就農。2021年末より築45年の空き家を移住体験住宅(ねっこ)として、地域住民や行政職員を巻き込みつつDIY改修。『Think globally, act locally = 視野は広く、行動は足元から小さく』を行動理念として、遊休不動産や耕作放棄地も地域資源と捉え、"あるもの見っけ"で地域づくりに取り組んでいる。

 

農土家園とは?

 『温泉、国宝、国立公園』で有名な霧島市で『土と人を耕す』をコンセプトとする農業経営体。農土家園の畑は日本初の国立公園が目と鼻の先にあり、全国的にも恵まれた自然の中で農業をしている。当園の野菜は霧島の自然と、"地循のわ"の中で育つ。ここで言う"地循のわ"とは、人の繋がり・縁によって紡がれる持続可能な生産体系と定義している。農業を主軸に地域の資源を生かした事業を霧島市で展開している。

 

移住体験住宅ねっことは?

『移住者が地域に根を張るお手伝いをする』ことを目的とする簡易宿処。全国で唯一、民間が空き家を改修、運営する移住体験施設。2020年末より改修、クラウドファンディングを実施し、2021年10月1日にオープン。2022年3月までの6ヶ月間で39名の方にご利用いただいており、主に霧島市への移住を決意した子連れ世帯が物件探しや山村留学の見学を目的にご宿泊いただいている。人口のV字回復を目的とせず、官と民の足並みを揃えた地域づくりの関係構築、まちの人材の多様性を高めることを目的としている。

 

活動内容の写真

上段左:農土家園で収穫された農産物

上段右:移住体験住宅ねっこの外観

下段左:移住体験住宅ねっこの内観①

下段右:移住体験住宅ねっこの内観②


パッション:

しんさんのご出身は牧園町なんですか?

 

 

しんさん:

そうですね。牧園町の轟集落という所です。そこで中学まで育って、高校は出水市にある出水中央高校に陸上の特待生として進学したので寮生活でした。地域づくりとか鹿児島を盛り上げたいなというのは高校2年生の時に初めて明確に言葉として出ましたね。

 

 

パッション:

そうだったんですね!何かきっかけがあったんですか?

 

 

しんさん:

高校までの夢は、国際マラソンで金メダルをかじることだったんだけど、持病の喘息の悪化と高校の環境の変化についていけずに陸上を諦めたんです。それで次の目標をどうしようかなと考えて、鹿児島で生きていくこと、鹿児島を盛り上げることを高校2年生の時に人生の命題として決めました。

 

 

パッション:

高校2年生の時から決めて、今までやってこられたんですね!

現在は農業をされていますが、どうして農業だったんですか?

 

 

しんさん:

「鹿児島で生きる」と決めて、まずは身近な人に恩返しをしたいと考えた時に、祖母が農家で当時跡継ぎがいないと困っていました。牧園で暮らそうと思ったら仕事をしないといけないので、土地と機械がある牧園町で農業をやっていこうと考えて東京農業大学へ進学しました。本当だったら大学4年間を終えたらすぐUターンしようと思っていたんだけど、ボルダリングジムの店長を1年やって牧園町へUターンしました。

 

 

パッション:

地元である牧園町で農業をやっていくと決めたのが、最初の一歩だったんですね!

Uターンされてからは、現在まで農業をされているんですか?

 

 

しんさん:

そうですね。現在、鹿児島に帰ってきて3年目、Uターンしてすぐに本業となる農業『農土家園』を始めました。農土家園では、「土と人を耕す」をコンセプトにしています。「土を耕す」には、農土家園の畑を耕すというより、牧園町や霧島市を耕す=地域資源を活用していくという意味が込められています。そして「人を耕す」には、農土家園の商品やサービスを通して、"食べるおいしさ"だけではなく、作物ができるまでの過程やこだわり、工夫などの"知るおいしさ"も味わってもらえるように消費者の認識を少しでも変えたいという意味が込められています。あくまで美味しいさつまいもを作ることは手段で、目的は地域づくり、美味しいサツマイモを通して知って欲しいことを伝えることがゴールです。

 

 

パッション:

農業は手段で、地域づくりが目的ということですね。しんさんの中には高校生の時の、「鹿児島を盛り上げたい!」という気持ちがあるんですね。実際に3年間農業をされてみてどうでしたか?

 

 

しんさん:

地元の人たちに食べてもらったり、農業を通して地域の魅力を知ってもらえたらと考えていたんですけど、最初の内は地元の人たちに自分の思いを伝えても中々響きませんでした。自分が目指している理想像に、全然近付かないなという印象だったんです。

 

 

パッション:

どうやって乗り越えていかれたんですか?

 

 

しんさん:

評価を得るために一旦外に販路をとってみたんです。具体的には、東京都の大田市場を介して、無印良品国分寺店などの事業者にサツマイモを買い取っていただいて、イベントを組んでいただきした。そして、お客さんの反応をフィードバックしてもらったら、「美味しいですね!イベント以外では売ってないんですか!?」という評価を得られました。関東からの評価・取引額を地元の事業者に伝えることで、地元の人たちにも響いて、取引単価の交渉も有利にできるようになりました。「外の評価を得る➡︎わざわざ買う・訪れる理由を作る」という流れです。関東への出荷が霧島の魅力を伝える手段だとすると、この流れ・手段は間違ってなさそうだなという手応えを得ることができました。農業を通じても地域づくりや地域の魅力を伝えることは充分できるということを再確認しました。

 

 

パッション:

それはすごく大きな一歩ですね!

地域づくりや地域の魅力を伝える為に、農業を大事にしている理由を教えてください。

 

 

しんさん:

牧園町を他の地域と比べた時に、どんな立ち位置になるかというと、リゾート地や観光地だと考えています。今後も農土家園だけではなく、色々な企業さんや地域内外の個人の協力によって、今まで来なかった人の流れが牧園町に生まれると思います。その際、観光客のおもてなしとして、大事になってくるのがやっぱり”食”だと思うんです。観光地に何を求めますかという統計データなどでは、必ず美味しい物や食が上位にくるので、"食べるおいしさ"と"知るおいしさ"を体験してサービス、受け皿をつくりたいと思っています。牧園町の資源をもっと活かすために、農も食という土台を成長させていきたいです。

 

 

パッション:

しんさんが農業を大事にされている思いが伝わりました!

続いて地域の魅力を伝えるなどにも繋がっていきそうな「移住体験住宅ねっこ」についてお伺いします。去年の10月1日にオープンということですが、なぜ移住体験住宅をされようと思ったんですか?

 

 

しんさん:

一番最初のスタートは2020年でした。農業を生業にしていますので、農政課に用事がある度に、今後地域づくりに関わりが出てきそうな部署に挨拶回りをするようにしました。最初は「何しに来てるんだろう?」という目で見られるんだけど、だんだん会う回数が多くなると打ち解けて、対話しやすい関係が築けました。その中で、中山間地域の取りまとめを地域政策課に「困っていることはありますか?」という話をした時、移住体験住宅があったら嬉しいということだったので、うちの親戚の空き家を改修して移住体験住宅を作ります!という話になりました。

 

 

パッション:

すごい決断ですね!!初めは行政との関係性をつくっていかれたのが小さな一歩なんですね。

 

 

しんさん:

地域活性化がうまくいっている地域、移住者が増えている地域の共通点を探すと、必ず行政と民間が手を組んでいて、移住体験住宅や大学生のインターンシップ生、サテライトオフィスを受け入れる為の施設があるんです。外からの人を受け入れる拠点があるんです。当時、市役所の方も移住体験住宅があったら良いなという要望があった、僕には親戚の築45年の空き家があった。だから、民間でできる範囲で良いと思い、小さな一歩を踏み出しました。

空き家を改修する費用はクラウドファンディングで集めたり、改修作業は地域の人たちや行政職員さん、地元の工務店さんが手伝いに来てくださいました。色んな人の手を借りて、何とか2021年10月にオープンしました。

 

 

パッション:

そうだったんですね。移住体験住宅に込められているしんさんの思いはどういったところにあるんですか?

 

 

しんさん:

牧園町は、現在、人口急減地域ですが、やっぱり民間でやる一軒家の移住体験住宅ではV字回復する事は難しいなと思います。だけど、面白い人たちが牧園町に入ってきてくれると、まちとしてできることが増えていくと思っています。まちの人材の多様性が増すことを期待していますね。

 

 

パッション:

移住体験住宅を通して人口を増やすということが目的ではないのですね。やっぱりしんさんの根の部分には、鹿児島を、霧島を、牧園町を盛り上げたいというのがあるんですね。

 

 

しんさん:

そうですね。例えば、牧園町に縁もない東京の人に日々の霧島の暮らしぶりが伝わるホームページをつくりたいとお願いしたとすると、お仕事としては受けてもらえます。しかし、「思い入れ」を持ってホームページを作るという仕事は中々難しいと思うんです。

でもホームページを作る方が、牧園町に移住して来た人だったらどうでしょうか?

その人は実際に地域との関わりもあるし、移住者となれば、やっぱり作ってくれるものが変わりますよね。まちの人材の多様性が広がっていくと、より地域が輝くと思っています。

 

 

パッション:

実際にオープンして約6ヶ月程たっていますが、手応えなどはどうですか?

 

 

しんさん:

6ヶ月間で約39名の方にご利用していただき、実際に移住されたのは、まだ1世帯3名です。今年9月ぐらいまでに子連れの方がもう1世帯移住されます。

実際に移住された方と話していると、一緒に面白い企画も生まれ、今後、仕事の面でも関わりが出てきそうです。

 

 

パッション:これからがすごく楽しみですね!!

最後に、今から何か踏み出そうとしている人に一言お願いします!

 

 

しんさん:

これから小さな一歩を踏み出す人は、その企画は「①やりたい②できる③求められてる」この3拍子が揃っているか考えることをオススメします。そして、小さな一歩を踏み出す際、仲間づくりがまずはとても大事ですよね。自分ひとりでできる「一歩」と、何人かでやった方が良い「一歩」っていうのがあると僕は感じました。自分ひとりの一歩としては、思いを話したり、考えたり、足で稼ぐこと。その先に3人くらい仲間をつくること。3人で一歩ずつ踏み出せば、小さな一歩は三歩になります。そうすることで、もっと出来ることが広がっていきます。

 


おわりに

しんさんとのインタビューを通して、鹿児島を盛り上げたいという思いをぶらさずに、様々なことに取り組まれていてすごいなと感じました。やっぱり何事も人との関係性はとても大切で、そこから生まれる可能性は無限大だと思ったので、今後のしんさんや牧園町の取り組みが楽しみです!

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