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みんなの一歩 じゅうよにんめ 〜坂口 喜代美さん〜【前編】

こんにちは!鹿児島県共生・協働センター、ココラボです。

ココラボでは『みんなの一歩』と題して、鹿児島県内で地域活動や社会貢献に取り組む方々へのインタビューを行い、その想いや背景を紹介しています。展示は、センターに入ってすぐ左手の壁際に常設していますので、ふらっと立ち寄った際には、ぜひご覧ください。

 

今回ご紹介するのは、14人目となる 坂口 喜代美(さかぐち きよみ)さん。鹿児島市下伊敷の「栄門(えいもん)」で活動されており、地域ににぎわいとつながりを生む“eimon park bazzar”を立ち上げた中心人物です。また、otonariやkadoといったレンタルスペースやシェアキッチンを運営されています。

 

家庭の中で。会社の中で。

「自分はここにいなくてもいいんじゃないか」と感じることが続いていたという坂口さん。けれどその裏側では、無意識のうちに「会社の今後」「自分が向かうべき方向」を探っていたのかもしれない——今は、そんなふうに振り返ります。

誰かの役に立ちたい。

このまちの“何か”を取り戻したい。

そして自分自身も、もう一度、何かを始めてみたい。

そんな気持ちが少しずつ重なり合って、ある日ふっと、動き出したのです。

 

地元の衰退に直面しながらも、「もう一度このまちに明かりを灯したい」と一歩ずつ行動してきた坂口さんの物語。地域に関わる一歩を踏み出したいと思っているあなたにとっても、何かのヒントや背中を押すきっかけになれば幸いです。

 

この記事は前編です。後編はこちらから。

みんなの一歩 じゅうよにんめ 坂口 喜代美 さん プロフィール

鹿児島市内生まれ。約30年前に下伊敷にある栄門に嫁ぎ、家業である工務店を手伝う。リノベーションスクールをきっかけに、リノベーション事業に注力。

空き家を活用したシェアキッチン、まちに活力と繋がりを生むためのeimon park bazzar開催など、まちに仕掛けていくエリアリノベーションを行う。

栄えていたまちの風景を取り戻す― 鹿児島・栄門で続く“eimon park bazzar”という挑戦 ―

鹿児島市下伊敷町の「栄門(えいもん)」と呼ばれるエリアに、年に一度のバザールがある。名前は“eimon park bazzar”。「つながる、このまち」を合言葉に、栄門地区にある商店街や町内会、学校(小学校や高校、大学など)がタッグを組み、地域交流を深めながら街の魅力をPRしています。

 

はじまりは2019年。地域にある公園からスタートし、今では50店舗ほどが並ぶ一大イベントへと育っています。

 

その立ち上げ人が、坂口喜代美さんだ。元々は地域の工務店に嫁ぎ、家業を支える日々を送っていました。けれどあるとき、自分の存在価値や居場所に悩む中で、「栄えていたまちの風景を取り戻したい」と一歩を踏み出したのです。

 

かつての栄門エリアのにぎわい。通りには多くの人が集まり、地域のイベントも盛んに行われていた。

栄門に嫁いで30年、静かに動き始めた「まちのリノベーション」

坂口さんは鹿児島市内で生まれ育ち、学生時代は音楽に打ち込み、短大では音楽を専攻。会社勤めを経て、下伊敷町の栄門に嫁いできました。

家業は工務店。義父は大工の棟梁として、若い職人を住み込みで受け入れ育てていたそうです。

 

「朝ごはんを作って、お弁当を持たせて、夜はみんなで一緒にご飯を食べて。そんな日々が当たり前でした。父が育てた職人さんが今も各地で活躍していて。父がやっていたことって、今思えばすごかったなって思うんです」

住み込みで働いていた職人さんたちと一緒に迎えた家族の誕生日。家族も職人も、ひとつ屋根の下で暮らすあたたかな日常。

ところが時代の流れとともに、まちは変わっていきます。8.6水害、市電の廃止、個人商店の減少――。

 

「かつて100店舗以上あった通り会も、今じゃ30あるかないか。そのうちの多くが銀行とかチェーン店で、昔ながらのお店って本当に少なくなって。なんでこんなふうになっちゃったんだろうって、ずっとモヤモヤしてました」

 

同時に、子育てが落ち着いた頃、自分自身について悩むようになったといいます。

 

「自分の存在価値って何なのか、自分って必要なのかなって。自分の居場所がないような気がしました。そんなときに、たまたまテレビで“まちづくりのリノベーション”の特集を見たんです。『あ、これだ!』って。すごくワクワクしました」

「小さくていい!!」リノベーションスクールとの出会い

その後、鹿児島市主催のリノベーションセミナー(※1)に参加。リノベリング主催の(※2)のリノベーションスクールにも通いながら、自分の中の“やってみたい”を探し始めます。

 

※1リノベーションセミナー:https://www.facebook.com/kagoshima.renove/photos

※2リノベーションスクール:https://renovaring.com/service/produce/renovation_school.html

 

「講座は月1で東京まで通ってました。人見知りするタイプだから、毎回緊張して。しんどかったけど、終わったあとに“行ってよかった”って思えるんです。何かが少しずつ動き始める感じがして」

 

坂口さんの中で浮かんできたのは、「みんなが気軽に集まれる場所が欲しい」という思い。

「地域に公園もあるし、マルシェイベントをやりたいと思ったんです。市役所に何回も通って、できるカタチを話し合いました」

 

こうして2019年、“eimon park bazzar”が始まりました。

“eimon park bazzar”開催の様子。

すべては「一本釣り」で始まった

初回は小規模に――そう思っていた坂口さんでしたが、気づけば出店数は30店舗超。すべて自分の足で集めたといいます。

 

「”3~4店舗から始めてみれば”と言われていたんです。だけど当時は周りから反対の声もあって。逆に火がついたんです。大きくするぞ!って(笑)ネットで調べたり、友達づてに聞いたりして、“このお店いいな”って思ったら直接行ってお願いする。もう完全に“一本釣り”でした(笑)。知らない人に声かけるのは緊張するけど、それしかできなかったから」

 

名前をつけるのにも、坂口さんなりの工夫がありました。

 

「“バザー”って聞くと学校のイメージが強いでしょ?だから“bazzar”って、ちょっとおしゃれな雰囲気にしたかったんです(笑)」

初開催にもかかわらず30店舗が出店。坂口さんが一本釣りで声をかけて集まった、個性豊かな出店者たち。

子どもたちの力が、まちを動かす

今では地域の学校とも連携しながら、年に1度のイベントとして定着してきたeimon park bazzar。eimon park bazzarを主催する「栄門つながるこのまち実行委員会」では、隔月で『栄門市場』も開催しています。

特に、小学生とのコラボレーションは大きな広がりを見せています。

 

「栄門市場では、伝統野菜“伊敷長なす”の苗を小学生が販売したり、中学生が総合学習で“地域で何ができるか”を考えたり。学校が協力的で、本当にありがたいです」

 

地域の伝統野菜「伊敷長なす」の苗を販売する小学生たちによる手づくり掲示物。地元の魅力を自分たちの言葉で伝える。

「もっと連携して一緒にやっていきたい」

通り会の既存店との連携は難しい側面もあるそう。

「最初は個人経営のお店にも声をかけたけど、私も含めて自分のお店のことで精一杯なんです。これからもっと連携して、一緒にできたら嬉しいですね」

 

そんな中、他地域の取り組みも刺激になるという。

 

「草牟田の通り会で毎月やっている朝市とか、騎射場の“のきさき市”とか。鹿児島には参考となる取り組みをされている方々がたくさんいらっしゃる。騎射場にも素敵なお店が年々増えていっているので、栄門もああいう風になりたいと思っています」

続けていくことで何かが変わる

「自分の居場所がほしくて始めて、あの頃の栄門みたいなにぎわいを、もう一度つくりたいんですよね」

 

そう語る坂口さん。2025年で8回目の開催を迎えるeimon park bazzarは、今も進化の途中です。

 

「まだ“理想の風景”にはなってない。でも、続けていくことで、きっと何かが変わる。そう信じてるんです」

 

今年のeimon park bazzarも楽しみです。

 

7回目を迎えた2024年のeimon park bazzar。年々スケールアップしながら、地域の風景として定着しつつある。

【後編へつづく】

 

次回は、坂口さんが取り組む空き家の活用やまちに仕掛ける次なる一手について、さらに深く伺っていきます。