みなさんこんにちは!鹿児島県共生・協働センター、通称ココラボの情報発信を担当しておりますパッションです!^ ^
ココラボでは『みんなの一歩』と題して、鹿児島県内で活動をされている方に活動の経緯や活動に対する想いなどを記事にまとめて、ココラボに入って左手すぐの壁際に展示しています。
今回は、情報発信編のひとりめとして、志布志市で活動されている田川貴雄さんに取材させていただきました。田川さんは、志布志市で『Willしぶ誌』というフリーペーパーを発行されており、今年度ココラボでも開催した『フリーペーパー展』にも出展いただきました。
田川さんのこれまでの活動や活動のきっかけ、フリーペーパーに関することをたっぷりとお聞きしました。皆さんに、鹿児島でとても素敵な取り組みをされている方を知ってもらうとともに、皆さんの活動を始める小さな後押しになると嬉しいです。
みんなの一歩とは?
鹿児島県内には、多種多様な方々が様々な活動をされています。そしてその活動に至るまでの過程も様々です。
そこで『みんなの一歩』では、鹿児島県内で活動をされている方がどんな想いで活動をしていて、その活動を始めるそもそもの最初の一歩は何だったのかをインタビューしていきます。
みんなの一歩が、皆さんの活動を始める一歩の小さな後押しになるように、そんな想いで始めました。
みんなの一歩〜情報発信編〜 ひとりめ 田川 貴雄 さん
ープロフィールー
自らの移住経験を活かして人の流れや繋がりを作るお仕事に従事するマン。地方移住してからの定住生活で夢を叶えた感はあるが、時間と寿命を切り売りして余裕のない毎日を生きる。一歳になる息子には精一杯の愛情をもって育児するが、手足を噛まれたり数多の風邪を移されたりと父親の苦労をそれなりに知る。ライフワークのブラジリアン柔術ではなるべく体力を消耗しないように省エネスタイルに切り替え中。
ライフワークであるブラジリアン柔術
地方に移住して、起業をしたいという思い
パッション:
今日はよろしくお願いします!田川さんは志布志に来られる前は何をされていたんですか?
田川さん:
出身は兵庫県で、愛媛大学卒業後は中堅の商社に勤めていました。会社を辞めてワーキングホリデーにも行きました。僕らの時代ってリーマンショックで社会が傾いたし、全国に支店がある会社を辞めて海外に行くって、自分はキャリアを捨てたんだと思ってました。でもこのまま会社に勤めて、昇進して上役になるのも違うなと思っていて。
会社よりも自分がベンチャーでいたいというマインドがありましたが、
このとき昇給してくれていれば起業していなかったかもしれません。
ワーキングホリデーはオーストラリアに。
オージーの知人から勧められた変なハット帽を2年間被り続けました。
田川さん:
ワーホリの後に縁あってベンチャー企業に入ったのですが、みんな何年かで辞めて起業していくのを見て、自分でも何かしたいなっていうのをずっと考えていました。でも同じ大阪の中でやっても、環境も変わらないしできることも限られてるなと思った時に、地方移住して何か起業するっていうアイディアと地域おこし協力隊という制度を知りました。
20代後半にもなって奴隷のように働かされる日々を経て精神と肉体の鍛錬を積みました。
パッション:
いきなり地方に移住するって怖くなかったんですか?
田川さん:
西日本は割と色々住んだことがあるんですよね。大学も四国だったし、北陸にも住んだことはあったし、ワーホリにも行ったので、もうどこに住んでもいいなっていう感覚があったんです。でも寒い場所はもう無理だと思っていました。金沢に住んでいた時があって、冬場になると1ヶ月間晴れ間を見ないとか、雪かきも毎日大変でした。道路が凍結してるのに単車しか持ってなくて死にかけたこともありました(笑)なので面白そうだなと思って絞り出したのは鹿児島と熊本と宮崎でした。
パッション:
そうだったんですね。地方に興味を持ったのは何かきっかけがあったんですか?
田川さん:
起業したいなと思っていた時に、熊本地震があったんです。なんかモヤっとして、友達とボランティアに行ったんです。福岡より南に行ったことがなくて、新鮮でした。道行く野山を走って、日本の中でもまだまだこんな地域あるよねって。あと、ボランティアで行ったけど、所詮民間ボランティアだし、地震直後のゴールデンウィークで人は集まったけど、半日ぐらいで仕事は終わったんです。でもレスキュー隊は瓦礫の処理とかしてて、勇んできたけど、物足りないなっていう思いがあって。そこから気になっていたというのもあります。
パッション:
その中でも志布志を選んだきっかけは何だったんですか?
田川さん:
全国の地域の事例を探していく中で、当時の志布志市が『目指せ日本一チャレンジ』と言って、世界一長い巻き寿司をみんなで巻いたり、世界一高いかき氷を作ったりしていて。自治体の情報を探していても、あまり出てこない地域もあるんですよ。HPやSNSもあまり運用されていない地域もある中で、facebookやYouTubeで情報発信をしていて、熱意をすごく感じたんですね。すごい生き残りをかけている自治体だなと思って、ビシッと感じるものがありました。
パッション:
情報を探している中で、志布志市に出会い、地域おこし協力隊に応募されたんですね。
田川さん:
そうですね、志布志市の地域おこし協力隊に応募しようかなとタイミングを何ヶ月か計っていた時に、志布志市のPR動画が炎上したんです。個人的にはこうくるのか!面白いな!と思ったんですけど、ネットではバッシングされて。でもこれまでの情報発信なども見ていたので、気持ちは守る側というか寄り添っていて、何も知らないのに勝手なこと言うなよ!と思って。最終的にそういう経緯もあって志布志を選びました。
パッション:
見ている内に応援する側になっていたんですね。
勉強の3年間。地域のことを理解し、人脈をつくった。
パッション:
地域おこし協力隊では主にどんなことをされていたんですか?
田川さん:
主に移住支援と婚活支援を担当していました。他には、地域の人から呼ばれて高齢者サロンの中で音楽の演奏をしたり、公民館で笑いヨガというのをやったり、祭りの手伝いをしたり、ひたすらお茶をついで周るとか、地域に入る仕事をしていました。満遍なく志布志市の校区を周ることができて、地域のことを理解できたし、人脈もできました。これはいける、これはあかんなっていう物差しはずっとそこで見て、勉強の3年間って感じでした。あとは個人事業として、民泊もしています。
祭りに慰問演奏にと色んなステージにお邪魔しました
パッション:
民泊をはじめたきっかけはなんだったんですか?
田川さん:
志布志市に来る前の大阪の会社で民泊業をやっていたので、住み込みの場所で民泊をしたいなと思っていたんです。地域おこし協力隊の3年目で民泊は始めました。移住支援は出張に行って説明するとか、連絡が来た人の対応でしたが、民泊だと実際に観光で来た人に直接話せます。家を新しく建てるので、もうすぐ民泊は閉めてしまいますが、これからも観光の仕事は続けていきたいです。
民泊に来たアジアからのファミリーゲストさん。ノリが良かった!
都市圏での出張移住フェア。頑張った後はラーメン巡りをするのが楽しみです。
パッション:
3年間の地域おこし協力隊の任期が終わったあとは、どういったことをされてきたんですか?
田川さん:
地域おこし協力隊として3年間やってきた移住支援と婚活支援を、業務委託として会社で受けていて、今年度で5年目になります。移住・交流支援センター「Esplanade」は、地域おこし協力隊を卒業してからオープンしました。移住・交流支援事業は、情報発信して、来た人の対応をして、出張に行くという3本柱でした。仕事を行う場所は、貸しオフィスの一角でもよかったのですが、コロナ禍が始まり、国の事業とかに参加して模索しながら、オンラインでのシステムがあった方が良いよねとなり、場所を借り上げてDIYしました。コロナ禍なので来る人も少なく、空き時間を見つけて作業服を着ながら解体していきました。漆喰を塗ったり、壁を作ったりしながら、相談対応もして、4ヶ月間でDIYして作りました。令和5年度には2階もDIYをして、ワーケーションや多拠点生活にも適した広いコワーキングスペースが完成しました。
エスプラネードDIY中…。
Esplanade改修前と改修後
みんなで良い部分を伝えていける連鎖ができれば
パッション:
フリーペーパー『Willしぶ誌』を作成するきっかけはなんだったんですか?
田川さん:
委託業務の中の情報発信で、何をしようかって時に、他地域の地域おこし協力隊の方が事業としてフリーペーパーを作成していることを知りました。大阪にいる時は、フリーペーパーって企業とかが出してるかと思ったけど、こっちに来たら地域活性化とフリーペーパーってめちゃくちゃやってる事例が多いなと思って。とりあえず身近にあったので志布志市でもやってみました。
パッション:
どのようなフリーペーパーを発行されているんですか?
田川さん:
移住支援事業の中の情報発信で、移住というのを表面に出したかったので、移住者とのインタビュー記事を載せています。裏面は見る人が何を見たいんだろうって手探りですけど、Esplanadeの店舗の中の情報や時事ニュース、前回発行してからの期間で起きた重要なことを載せています。現在は四季ごとに発行しているので、年に4回発行していますね。
パッション:
『Willしぶ誌』と名前をつけた理由はなんだったんですか?
田川さん:
willは志という意味で、志布志の志からきているのと、フリーペーパーの前に、『will424メール』というメールマガジンがあったので、こっちはフリーペーパーなので「志」を「誌」にしています。
パッション:
そうだったんですね。最初フリーペーパーを作成する段階で、どんな思いがあったんですか?
田川さん:
テーマはとにかく緩く、明るくでした。公共事業なので、普通に活字にしたら恐らくみんな読まないので、コーヒーを飲みながらやテイクアウトの飲み物を飲みながら見てもらえるぐらいの気軽さにしたかったんです。なので字体なども全部緩くしています。
あとは、移住者の声を載せることで、この人に会ってみたいと思わせる誘導ができたらと思っています。地域の人からしたら再認識というか、地元でもこんなことしてんねんなとか、移住者の方も地域の人に知ってほしい部分ってたくさんあると思うし、そういう感じで少し噂になっていけば良いなと思っています。
パッション:
地域の人からの認知や、この人に会ってみたいと思わせたいというのは、田川さんがこれまで活動してきた中で感じてきたことだったりもしますか?
田川さん:
そうですね。僕も実際住んでみて、いい環境だなと思うし、だからこそ定住をしてるんです。一方で、”良いものがあるのに活かせてない”ってほんまにずっと聞いてる言葉で。活かせてないわけじゃないし、みんな頑張ってるので、それを打破するんだったら、良いものを伝えるためのツールにしたいということは常にあります。とりあえず紙媒体として形にしたい、認知度の向上というのをフリーペーパーで落とし込みたかったんです。それを形にして配りまくる。いつも300〜500部ぐらい印刷しますが、全部なくなるまでずっと配るし、鹿児島県共生・協働センターさんに開催していただいたフリーペーパー展にも出させてもらいました。
今年度ココラボで開催した地域を伝えるフリーペーパー展
パッション:
フリーペーパー展ではありがとうございました!どういった所に配ったりするんですか?
田川さん:
置いている所は、Esplanadeや市役所、地域のお店に持っていきます。あとはEsplanadeで焼き菓子やドリンクのテイクアウトで紙袋を渡すんですけど、その紙袋にも入れます。
パッション:
色々な所で配りまくっているんですね!
フリーペーパー展では、出されてみてどうでしたか?
田川さん:
僕も見に行くことができたんですけど、制作物として他と比べるのも大事だなと思いました。読まれてからのフィードバックもあまりないので、答え合わせとしてフリーペーパー展に置いたり、手に取ってもらった人から感想を聞いたり、このように取材してもらって、自分のやってきたことへの答え合わせができれば良いですね。
フリーペーパーは情報をどう見せるかの提案だと思っていて、Willしぶ誌はこういう見せ方しますよという提案を、みんなにいろんな形で伝えることができたら良いですね。そうしたら、正解かは分からないけど、こんな感じで真似て情報発信していったら、みんなで良い部分を伝えていける連鎖ができるのかなって。あの人もフリーペーパー作ってるし、作ってみようかなとなってくれれば良いなと思います。
パッション:
素敵な連鎖ですね。地域の中でも増えていくと良いですね。
自分が読みたくなるペースでつくる
パッション:
フリーペーパーの制作費や印刷費は、行政からの委託費で賄っているということですよね?
田川さん:
そうですね。デザインは、デザイナーさんにお願いしています。最初の2回ぐらいはデザインも悩みましたが、クルー(従業員)とも意見を出し合って決めていきましたね。形になる所までは、デザイン面で時間がかかりましたが、後はもうフレームが大体決まっているので楽になりましたね。できるスピードもめっちゃ速くなりました。
パッション:
フリーペーパーを作る中で、大変なことはありますか?
田川さん:
インタビュー記事を作成するのは時間がかかったりしますね。やっぱり一人ひとり求めているクオリティは違うので、それに応えながら1ヶ月ぐらい制作が伸びたりもします。
パッション:
インタビューの対象者はどうやって見つけていくんですか?
田川さん:
これまでの人脈の中での方もいますが、最近は新しい方々で固めていますね。旬の方が良いかなと思うので、なるべく移住して来て1年以内とかの人や面白い趣味・仕事をやってる人を探してインタビューしています。
パッション:
『willしぶ誌』は11号目ということで、長く活動してこられていますが、フリーペーパーを続けていくコツってありますか?
田川さん:
無理なく続けていくことだと思います。気が付けばあるみたいな感じの感覚ですね。うちがずっとやる限りは、フリーペーパーはなくしたくない。地域活性とフリーペーパーが紐づいてることが多いって話をしたと思うんですけど、いきなり不定期になったり、終わったりが多いのも事実です。うちは事業として受けてるので財源はあるから、年4回だったらそれをやり遂げていく。2ヶ月に1回とかだと苦しくなってくるし、年4回でこのペースでずっとやりたいなと思っています。無理のないペースで、確実に、同じクオリティでずっと作っていくというのを大事にしていきたいし、そろそろ次号を作りたいなという自分が読みたくなるペースで作りたいですね。
パッション:
自分が読みたくなるペースというのが素敵ですし、それがモチベーションにもなりますね!
では最後に、これからのフリーペーパーと田川さんの展望を教えてください!
田川さん:
もっと、うちの店舗に置いてほしいとか、早く出ないの?という声が聞けると嬉しいですね。まだまだテイクアウトのときに何か挟んでんなとか、また次の号が出てるなぐらいの感じなので、欲しいという声をもっと聞けるようになれば、事業も広がっていくのかなと。
運営している6つのメディア(HP・メールマガジン・フリーペーパー・ラジオ・SNS・公式LINE)の情報が循環して、取り組みをもっと知ってもらえたら、フリーペーパーの発行部数も増えていくと思うんですね。もっとみんなに知ってもらって、事業を活性化していきたいです。空き家バンクを使用するとか、お試しで来る人が増えて、行政からも評価されて、まちが賑わっていくってのは理想だと思うし、制作物があると、今までこうやって活動してきたんだなという振り返りもできるので、自信がなくなった時、折れそうになった時、迷子になった時に自分の方向を見直せる大事なツールですね。
個人としては、できれば自分の力で事業を広げて、社員を雇いたいというのが野望なんです。今事業としては、パートの従業員さんが4人はいるけど、事業を広げて社員を雇えるようになるのが今後の目標です。行政からの委託事業も4年目になってきたので、会社の事業も、個人事業も両方を広げていきたいというのが今の思いですね。
Willしぶ誌の編集をされている田川さん
おわりに
インタビューを通して、かなり濃ゆい田川さんのこれまでに触れることができました。縁もゆかりもない志布志市に来られて、様々な活動をされていることが物凄く素敵だなと感じると同時に、フリーペーパーを制作する際に、「自分が読みたくなるペースで作りたいです」と言われていたことが特に印象的でした。どんな活動をする上でも、無理のないペースで、自分が楽しいと感じるバランスを見つけて、持続的に活動し続けることが大切なんだと気付かされました。